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荒廃した人生から [聖書]

彼はよろよろとステージに出て来た。
待っていた聴衆はほほえみを浮かべた。
ぎこちないタッチで、まず弓を引くと
弦が切れた。
聴衆は低く、くすくすと笑った。
もう一度弓を引くと
もう一本の弦が切れ飛んだ!
今や会場は笑いどよめく。
もう一度!
すると、震えていた第三の弦が切れる。
そして、シッ! という不満の声が
立っている演奏者に浴びせかけられる。
彼は立っている
――その天才は失われずに、平静だが、
ただ一本の弦とハガニーニが残っている。
彼は演奏する。
一本の弦の大胆な調べが
あらしの中に立ち上がる、
ちょうど青空を求めるように。
そして、沈黙が支配する、
それから、おそれが――
人々は頭をたれる。
前に不満の声をあげた者も、
今はすすり泣いている。
そして、最後のメロディーが
震えながら消え去って行った時、
あるものは「ブラボー」と叫んだ。
そして、ある者は祈ることを学んだ。
(F・B・マイヤー)
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